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序 章 魔王の演じ手
広い天幕の中、漆黒の鎧を纏い、黒の剣を腰に下げた相田は困惑していた。
「さて………どうしよう」
聞こえないように呟く。
目の前では集まった蛮族の代表達が魔王演じる相田の前で膝をつき、頭を下げて臣下の礼を取っていた。
「魔王様、我らオーク族、約七千。馳せ参じました」
部族として最も多く、さらに魔王軍が集まる場所を突貫工事で用意したオーク族の代表が最初に名乗りを上げる。彼らとは最初に約束を取り付け、それ以降はこの集結場所のために、一族総出で森を切り拓いてもらっていた。
そして次々に報告が上げられる。
「我らゴブリン族、約六千。魔王様と共に戦いたく参上しましたじー」
大人の身長の半分程度しかない小型の蛮族、ゴブリン。
相田の頭の中で、リールの母親が彼らに殺されたことが一瞬だけだが思い出された。
しかし、それをここで引きずる訳にはいかない。相田は口を閉じ、小さく頷くだけに留め、次に並んでいる鷹のような羽の生えた一族、そして全身鱗の一族へと目を向けた。
「我らバードマン族。集まりました数は凡そ三千、魔王様に我らが空を献上しに参りました」
「リザード族、同じく三千。我ら水と共に生きる者全ての代表として、魔王様に忠誠を誓います」
そして最後にいる狼の亜人が、気まずそうに口を開ける。
「我らライカンスロープの民。その数………千。しかし数は少なくとも、魔王様への忠義の心は他の諸部族に決して劣りません」
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