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「何、ニヤケてんだ?」
言われて、自分の口元が緩んでいたと気づき、慌てて引き締める。
「ちょっと、思い出し笑い?」
「いいことがあった?」
「うん。今朝会った――」
「――おかーさん、味噌汁もうないの?」
「あるよ」
亮からお椀を受け取って、キッチンに立つ。
「智也と真は?」
「いい」と短く返したのは、真。
「あ、もらうかな」と言うと、智也はずずっと残りをすすって、カウンター越しにお椀を差し出す。
亮のお椀と引き換えに受け取る。
「ご飯は?」
「食う」
今日の晩御飯は、炊き込みご飯となめこの味噌汁、鯖の塩焼き。
昨日、お寿司を食べ過ぎたから、今日はあっさりだ。
智也はお寿司を食べていないけれど、お父さんと味の濃いつまみでお酒を飲んだから、今朝は口の中が変な味がする気がすると言っていた。
「真、ご飯は?」
「少しだけ」
「俺も!」と、亮が茶碗に残ったご飯をかきこもうとする。
「亮はだめ」
「え、なんでぇー?」
「ユニフォームがきつくなってきてるでしょ」
「……はーい」
しょぼんと肩を落とし、亮は箸ですくったご飯を口に入れる。
「そんな、ヤバい感じ?」
「うん。丈は長いのに、お腹とお尻がきつそうで。今のより大きいサイズはないから、今年はなんとか着てもらわないと」
「そっか」
「亮はお菓子を食べ過ぎなんだよ」と、真が茶碗を差し出しながら言った。
「あとは、もっと動くか」
「真だって、お菓子食べてるじゃない」
「俺は太らないから」
「うわっ! むっかつく」
事実がゆえに本音が漏れる。
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