第17話 フェリル防衛戦

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「ジャス、帰ったらいつもの飲み屋代奢れよ」 「そりゃあもう借金してでも全部出してやるよ」  俺はちょっと笑った。ガチで豪遊してやろうと思った。 「悪いけど、お前らに出来ることはない」  そう言った声は、多分とても冷たいものだった。  俺は誰も死んで欲しくない。  俺の側にいると巻き込んでしまう。  だから明確に拒絶した。  ジャスは何も言わず、だけどちゃんと引いてくれた。サイモンの腕を無理矢理引っ張って、〈転移〉を発動する。  防壁まで下がったことが魔力の流れでわかった。  太陽が空の頂点に差し掛かる。 「さて、ロニヤ。俺の本気はここからだが、準備運動は終わったか?」 「アッハハ!それはこっちのセリフですわ」  ピニョが上空で獰猛な唸り声を上げた。  ロニヤは俺が狙いだと言った。だったら、はなから俺が前線に出て、魔族も魔獣もぶっ殺してやればよかったんだ。  フェリルが狙われているわけじゃないとわかったんだ。なんだ、いつもと変わらないじゃないか。いつも通り、俺が魔族を殺して終わり。  誰にも恨まれることはない。俺は俺の戦いを、自分自身で完結する。  ただ、それだけだと思っていた。
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