僕の夢

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ

僕の夢

梅雨の季節…六月の雨の降る日、僕と結衣は哲学の道を歩いていた。 京都に住んでいるのに初めてなのも来た理由の一つだけど、この近くに先日、優花さんのお父さん…神社長に教えて頂いた洋食のお店があるからである。 もう一度、あの料理を味わいたい…そう思って結衣と一緒に尋ねてみようと思った。 お店は白川通から少し住宅街に入ったところにあった。 …えーっと「洋食のミヤサキ」ここだ!お昼時ということもあって、少なめの客席が満席になっていた。 僕達は少し待って、テーブルに着いた。 ポニーテールの女性…優花さんより少し年上だろうか?一人で接客をこなしている。あれ?この女性何処かで見たことあるけど気のせいかな…? 「いらっしゃいませ…ご注文は…?」 「すみません、初めてなんでオススメを教えて頂けますか?」 「ランチはAランチとBランチだけなんです。」僕達は少し交換することにして一つずつ注文した。 しばらくしてテーブルに注文したお皿が並べられた。 「ごゆっくりどうぞ…」 まずはスープを頂く。この間のスープではなく、シンプルなコンソメのスープだ。 美味しい!何故こんなに味に深みがあるんだろう?次にポークソテーを頂く。これも濃い味付けなのに爽やかな香りがするのは香草だろうか? 結衣が「あーん。美味しいよ!翔くんこんな店よく知ってたね!」 僕は結衣にエビフライを少し分けてもらう。…!これもカラッと揚げてあるのにジューシーである。あっという間に僕達は平らげてしまい、お腹一杯になった。 …お会計の時にレジの前で「調理師募集 見習い可」と貼り紙が貼ってある。 僕はポニーテールの女性に「僕、料理を学びたいんですがこれダメですかね…?」と訊いてみた。 突然の申し出に結衣も彼女もビックリしたようだ。 しかし、すぐに「うーん…私の父が調理してるんだけど…多分学生さんは採用しないかも。でも一応訊いて見ます。連絡先を教えてくれますか?」 お店を出て結衣に謝る。「ビックリした?ゴメンね。」 「ううん。翔くんのやりたいこと私も応援したい!」 それにしても、自分でも何であんなことを言ったんだろう?料理に感動したのだろうか?…きっと羨ましかったのかもしれない。 ペットトリマーやメジャーデビュー。 僕には明確な夢がなかった。 こんな美味しい料理を作って、誰かに喜んで貰いたい… ささやかな、でも確かに踏み出した夢への一歩だった。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!