3人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
胸を焦がす出来事
「いらっしゃいませ…本日はお越しくださり大変ありがとうございます。
ここでは幸せになるために僕達が頑張っているお話を少し皆様にお見せしたいと思います…
楽しい出来事と切ない胸の痛み…両方を存分に味わって頂けるように頑張る所存でございます…
では…前菜からご覧ください…
自分…宮田翔(みやた しょう)は18歳の平凡な大学生である。
この四月に 京都の大学に入って何もかも目まぐるしく時間が過ぎて行く中でやっと自分にも幸運が舞い込んできたようだ。
入学して間もない四月…山側に桜が見える駅のホームで電車が来るまでフワリとした風に舞う桜吹雪を見つめていた…
「あの…」
「……?」
声がした方を振り返ると見慣れない一人の女の子がそこに立っていた…
その子は両手で持った封筒を僕に差し出した。
「あの…これ…読んでいただけますか…?」
「は、はい…」
女の子らしい可愛い封筒の表と裏を見ると特に何も書かれてはいなかった…
そして僕が封筒を見ている間に…もう彼女の姿は無かった。
自分の部屋に帰ってテーブルに部屋の鍵と床にバッグを置く…
僕は気になっていた封筒を開封るために引き出しからペーパーナイフを取り出した。
封筒の中身はそれとお揃いの可愛い便箋に綴られた手紙だった…
ふうわりといい香りがした手紙を広げてドキドキしながら僕は目を通した…
その手紙の内容…
それはにわかに信じられないというか…モテない自分にとっては何かを疑わずにはいられない内容だった…
…夢でも見てるんじゃないかな…?
当たり前だが、僕が何度見ようとも手紙のその内容は変わらない…
手紙には「好きです。付き合ってください。」という趣旨の簡単なメッセージと連絡先のアドレスが添えられていた。
高校時代は特にやりたいことも見つからず、三年生になって周囲の焦りに合わせて受験勉強を始めて、何となくの大学生活。
もちろん彼女などは縁遠く誰とも付き合ったことは無かった。 だからこんな手紙を貰ったら普通の大学生なら〝ふうん〟といったような感じかもしれないけど、僕にとっては書き留めで札束が送られてくる位の衝撃というか嬉しいことである。
正直言って彼女を駅でも電車の中でも見かけた記憶が無い…
どうしでも心当たりを思い出せない…
何かの間違いなのでは?と思うしか無かった。
最初のコメントを投稿しよう!