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イタチの獣人であるソミンはまだ日が昇らないうちから起きだして
昨日、捏ねて一晩寝かせた生地を取り出し2次発酵をさせてからオーブンで次々と焼きあげていく。
焼きあがるまでに店を水拭きして床掃除が終わるころには香りのよいパンの匂いが店内に広がっているのだった。
店の窓からみえる外はうっすらと明るくなりはじめるころ、慣れた手つきでパンを並べていき全てを並びおえると外開きのドアにかけてある小さな看板をcloseからopenにひっくり返してドア下にストッパーをいれて開いたままにして焼きたてのパンのイイ匂いを店の外まで届ければ後はお客さんを待つだけだ。
ソミンはこの街のパン屋として1人で店を切り盛りしている。
毎朝、出勤する獣人さんたちや冒険者さんたちの朝食用として惣菜パンや菓子パン、サンドウィッチなど数種類あるパンを定休日以外は焼き続けている。
種類も多くて作るのが大変だけれどパンを買って喜こんでくれる顔を見るのが好きで「美味しかった」と言ってくれるお客さんがいれば頑張れるのであった。
この前店にきた2人組の人間のお客さんはこの街に引っ越してきたばかりらしく周辺のことを聞かれて答えたらベーコンチーズやオニオンブレッドなどたくさんのパンを買ってくれて、2人で住む家が近いと言ってたからお得意様になってくれると嬉しいな。
街の北側には本格的な円形闘技場まであってお祭りとかがある日は賑やかなのだが街の外は魔物が出るので警備隊が東西南北の街の入り口に配置されて僕たちが寝ている間も護ってくれているのであった。
「ふぁああ—-…、はよう。今日も何か適当に10個くらい選んでくれ」
そう言って欠伸をしながらパン屋にきたのは警備隊をしているライオンの獣人のセビンさんだ。
警備隊は街の犯罪も取り締まっていて、僕がキメラの獣人に絡まれてるのを助けてくれたのがセビンさんだった。
彼は僕を家まで送ってくれて店の残り物で申し訳ないのだけれどお礼にパンを何種類か渡したのだった。
そしたら次の日にパンが美味しかったと言って店に来てくれて、その後も出勤前にこうして他の隊員さんの分も含めて買ってくれたりするようになったのだった。
この日も順調にパンを売っていたのだけれど、店の窓から見えたヨロヨロと歩いているブタの獣人のおばあさんは具合が悪そうで…
「大丈夫ですか?少し休んでいきますか」
とソミンは店の外まで出て声をかけたのだった。
「…ハァハァ…すまないが、…ハァ…そうさせてッ、もらうと助かるよ」
と息切れをして苦しそうなおばあさんに手をかして店の中へ連れていき奥の住居部分に案内をして座ってもらい、飲みものを用意して「ゆっくり休んでください」と言うのであった。
閉店の支度をしていると、おばあさんは顔色もよくなって店に出てきたのでソミンは柔らかいパンを3つ選んで「明日の朝食にでも食べてください」と渡せば、おばあさんはパンと休ませてもらったお礼だといって小さなマジックアイテムのガラス瓶をソミンに置いていったのだった。
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