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プロローグ
四月。
暖かい日差しの降り注ぐ教室の窓際の一番後ろの席で、俺は悟りを開いた菩薩のような顔をしながら本を読んでいた。
「ねぇねぇ、あの人かっこ良くない?」
「えっ、どこどこ?‥‥あっ、ホントだ!え〜、結構タイプかも〜!!」
一見してみると女子のような会話であるが、男である。女子と見間違えそうなほど可愛い顔をしているが、男、なのである。
「お、あの子めっちゃ可愛くね?」
「あ?どこだよ?」
「ほらほら!あの子だよ、あの子!!」
「えぇー、別に普通じゃね?」
そんな会話をしているのも、男である。
そいつらの目線を追って窓の外を覗くと、先生の指示の下、ぞろぞろと体育館に移動している新入生達の姿が見えた。
そして、その新入生達の中に女子の姿は皆無である。当たり前だ。
何故ならば、ここは男子校であるからだ。
あちらこちらから聞こえて来るホモホモしい会話を耳に入れながら、俺は思わずスンッと真顔になった。
‥まぁ、一年もこんな感じの会話をずっと聞いてれば、流石に俺も慣れ「きゃー!!見えた!?今、如月様が体育館に入って行かれたわ!!」
いや、こんな騒ぎ日常茶飯事だし慣r「きゃぁぁぁー!!篠塚様がこちらに手を振ってくださったわぁ!!」
入学式に役員として出席する為か、続々と体育館に入っていく生徒会のメンバー達の姿を見て、黄色い悲鳴を上げるチワワと呼ばれる奴ら。
そのハイトーンボイスに耳をやられ、俺は遂にブチ切れた。
読んでいた本を静かに閉じ、一度深呼吸をする。
そして、クワッと目を見開いて勢いのままに机を掌で叩きつけながら立ち上がって叫んだ。
「こんなん慣れてたまるかあぁぁァァァ!!!!」
そう、あれは俺が中3の受験を迎えた年の頃。
あれが全ての始まりである。
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