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「本当にやっちゃうわよ」
「やればいいだろ」
「その自己中心的な性格を直すつもりは?」
「は、それはお前だろ」
「なら、謝るつもりも……」
「一切ない!」
もう怒った。
これが本当の最後通告なんだから!
「歩み寄る気がないなら、今すぐ破り捨てるからね」
両手の指先で婚姻届の上部を摘まみ、引き裂く準備をする。
「ああ、めんどくせえ、好きにしろ!」
舌打ちをして彼が立ち上がると同時に、両手が上下に動いた。
「……あ」
動かしたのではない。怒りに駆られて、無意識に動いてしまったのだ。
手元には真っ二つになった、幸せの象徴。
「お前……まじで、なにしてんの?」
流石に本気でやるとは思っていなかったのだろう。唖然とした顔で彼が固まる。
その表情を見て、私もようやく我に返った。
ああ……どうしよう。
取り返しのつかないことをしてしまった。
「ちょっと、出てきます」
いたたまれなくなった私は、逃げるように部屋をあとにした。
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