1、その春に

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放心状態の私を少年が退かすように棚の間に入ってくると、どうやら少年は、そこで私が足と腕の怪我で動けないと思ったらしい。 「しょうがないな。」 と言いつつも、腰に手を回し、近くのソファまで連れていってくれる。 意外と優しいんだな。 そして去るかと思いきや本を持ってきて近くで勉強し始めた。 「ありがとう。」 そう伝えれば、直ぐに「別に。」と返した少年は、数学の問題集をカリカリと解き始めた。 私は、どうしたらいいのか分からず、とりあえず現状理解をしながら考え込む。 戻り方の話しは………。 『最初に思った願い事』 だったはずだ。だが、私は願ってないしな。
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