前編 1.序章(五月視点)

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 「〜った」「〜だった」と、ここまでが今年の4月25日までの話。4月26日に事は起きた。  なぜ日付を覚えているのかといえば、偶然26歳の誕生日だったからなのだが……どうでもいい。  それより今は、注意力と警戒心散漫すぎた過去の自分を最大限の力を込めて殴り倒したい。そして『26日は誕生日なんだから家でケーキでも食っていろ』と怒鳴りつけてやりたい。  結構呑気に語っているが、ただ今絶賛本当にやばい。もともと冗談言う柄でもないのに、そんな我を見失うほど窮地に立たされている。  もう何がまずいのか一周回って良いのか、いや…何周回っても絶対に良くはない……とにかく只今「人生二度目の大ピンチ」なのである。  誰でも良いから助けてくれ。そう叫んで街中を駆け抜けたい。こうなったらお悩み相談室に電話するか。いっそのこと懺悔の小窓にでも駆け込むか。  ここに来て初めて、人付き合いを怠ってきたことに後悔している。ああ、本当に…本当にどうしよう。まずいな。  やばい・まずい・どうしようを九九暗記並みに脳裏で連呼する今日の日付は4月27日火曜日。現在の時刻、朝の5時ジャスト。  別に目覚ましの設定時刻[5:30]を変えたわけではない。そんな余裕、今の自分にはない。  ではなぜ目覚ましよりも早く起きているのか。別に…今日は偶然早起きだとか、はたまた朝方に切り替えただとか。そんなことではない。  今日は27日。ということは昨日は26日。26日は人生が2回目に終わった日である。  ……つまり俺は昨日から一睡もできていない。  低血圧人間が徹夜して、早朝5:00から冴えまくっている。そんな異常事態を引き起こすほどまずいこととは何なのか。俺の身に一体何が起きたのか。  昨日の悪夢を思い出すと死にそうになるので(主に心が)あまり考えたくないが……考えずにはいられない。  だからここからは、俺の二度目の人生がなぜ、いかにして終わったかの話で始めるとする。
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