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あの日、いつもの遣いで歩き慣れたレンガ道。
木とレンガの建物が増え、この町も、街へと姿を変えた。
「わたしの小さいときは、この辺りはみんな木の家だったのよ」
母が、言っていた。
小さい私には、想像できなかった。
少し大きくなり、教会に奉公へと出された私。両親と離れて暮らし始めてから、10年経った。
「エリザ、街に遣いをお願いできるかしら?」
「はい。シスター」
「これを街の会長さまにお願い」
「わかりました」
シスターから預かった袋を抱え、街外れから街なかへと向かった。
教会からはレンガ舗装の道。空は、蒼く澄んでいた。
初夏の香りがする風。
めったに行けない街を楽しみに、エリザは歩いた。
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