憧れの正体

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 小さい頃からずっと、知らない世界を見てみたいと思っていた。  地球人も宇宙人もロボットもアンドロイドも一緒に宇宙船に乗って星々を探索したり、過去や未来をラベンダーの香りで行き来したり、階段から転げ落ちたら男の子と入れ替わったり……とかいう映画を何度も何度も見た。  ある日、星がこぼれ落ちてくるんじゃないかというほど空に満ちている山のふもとに、私はひとりでやって来ていた。  飽きることなく星空を眺めていたら、山の上の星の一つがだんだん大きくなって地上に……ではなく、私に迫ってきた。  光はとうとう私の頭上までやってきて、目が開けらないくらい大きく、まぶしく、私を照らした……と思ったら、自分の体が地面から浮いていた。 「帰るよ」 見知らぬ男の子が光の中から私の手を引いた。「え? 帰るってどこに??」と思った瞬間、私は見覚えのない女の子の姿になっていた。 光の玉は2人を包んでものすごい速さで上昇し、上昇し、上昇し……気づいたら周囲は漆黒に包まれていた。それでも、私たちを包む光の玉は上昇をやめなかった。  やっとわかった。そうか、そうだったんだ。 ――私が、宇宙人だったんだ! 「やっと思い出したんだね」 男の子はそう言ってにっこり笑った。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!