綺麗に晴れた日に死にたい

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僕は太宰治が書いた人間失格が書物の中で一番好きだ。 なぜかって? 僕もなかなか恥の多い生涯だったからね。 僕の理解者は現実にいない、翳あるイケメンの葉蔵だけだった。 さあてもう生きていくのも疲れたな。現実に僕の理解者や味方なんていないし。生きていく理由なんてないから。 実は僕はずっと前から死のうと思っていた。 けど美しい死に方を求めていたら、いくつかの季節が流れてしまった。 「やっぱり綺麗に晴れた日に死にたいよね。」 土砂降りの雨の中でもなく、中途半端な曇り空でもなく、雲一つない青空の下で、誰もがこの空を見て幸せを感じる日に死にたいと思った。 死に場所は僕の家族も職場の人間も知らない、ある山奥を選んだ。この日のために家族には旅と嘘をつき、職場には今まで貯めた有休すべて使ってやった。どうせもう二度とあの場所には帰らないし。後ろめたい気持ちなんて微塵もなかった。 電車を乗り継いでその山奥に向かう。たまたまネットで見たその山奥は美しい花に溢れていた。僕はその山の崖から飛び降りようと決めた。綺麗な空、綺麗な花。その綺麗なものに囲まれて死ねるなんて幸せだと思った。この場所で死ねたら僕は、最期くらい幸せだと思えるかもしれない。
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