貴方が大好きです……死ね!

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貴方が大好きです……死ね!

2020/06/03 文章を追加しました ザァザァと降り注ぐ雨。 さっきまでカンカンに晴れていたというのに、いまでは稲光を纏う暗く重い雲が空を覆っていた。 シャッターの閉まって店の前で降り止まぬ雨を見ながら途方にくれていた青年は、遠くから走ってくる人影に気づいた。 鞄を傘がわりに頭に乗せてこちらへかけてくる少女がいた。 バシャバシャと降りつける雨が世界を遮り白く染めていた。まるで霧の中にいるようだと思いながら少女を目で追った。 少女に気づいた青年は、自分と同じように雨を防げるこの場所を見てやって来たのだと考えた。 「あっ……」 ビショビショに濡れた少女は青年の隣へ来ると軽く会釈をして隣に立つと一緒に雨宿りを始めた。 青年は、濡れたシャツから肌が透けて見えてしまっていることに気付き、耳まで真っ赤に染めて目をそらした。 遠くに見える信号の明かりだけが白い世界に灯る。 無言の二人、雨の音だけがこの場の唯一の音である。 気まずくなった青年は、何か話しかけてみようと少女のほうを向いて、 浸水した道路を走って来たトラックが巻き上げた水飛沫をもろに浴びて濡れ鼠のようになった。 全身に水を浴びて驚いて転んだ青年に少女は笑いながら手を差し伸べた。 「……あはは、ねえ、君。田中君でしょ?」 自分のことを知っていることに驚き、青年ーー田中は、目をパチパチとする。 「ほら、私!覚えてない?」 少女は向日葵のような笑顔を浮かべて自分の顔を指したが田中には分からなかった。 「……うーん?ごめんなさい」 一応知り合いじゃないか、考え誰だか結局分からず、申し訳なさを感じながら謝罪した。 「本当にわからない?」 とはいわれても、やっぱりわからない。 覚えがないのだ。 彼女は自分を誰かと勘違いしてるのではないかと思えてきた。 「あ……」 田中は頭に浮かんだ名前を呼んだ。 「もしかして、美穂。美穂なのか!?」 田中は人が変わったように両肩を掴んで彼女を揺さぶった。 「……そ、そうだよ。美穂だよ!」 肩を掴みながら顔を近づけてきた田中に顔を赤らめながら少女ーー美穂は、あわあわとした。 「美穂っ!よかった!お前……生きてたんだな!!」 涙を零しながら田中は美穂と呼ばれた少女を抱きしめた。 少女は少し驚いた様子だったが、震えながら抱きしめる田中に気づくと"今までごめんね、おにいちゃん……"と呟いた。 慈愛に満ちた表情を浮かべ兄、田中青年の首に手を回した田中美穂は、目にも止まらぬ速さで首を切断した。 「ごめんね、おにいちゃん♡」 自分に何が起こったのか気付かず死んだ青年は、思い出したかのように切断された断面から血を噴水のように吹き出しながら崩れ落ちた。 体を真っ赤に染めながら空を仰いで快楽に浸かる美穂は両手に持った頭を愛惜しそうに抱きしめて舌舐めずりをした。 雨によって水浸しになった地面に流れ出す血。血だらけだった身体は雨という天然のシャワーによって流れ落ちた。 お兄ちゃんを自分だけのものにするために…… 行方をくらませていた妹は兄を殺した。 田中美穂と呼ばれた化け物は魂も血液も流れ出した空っぽの何かを引きずって雨の向こうへ消えていった。 ーー世界が歪む 美穂は一人道路に立っていた。 「え?」 動揺して声を上げようとしたところで後ろから水飛沫を上げて走ってくるトラックに気づいた。 運転手は美穂に気づいて必死にハンドルを切ろうとするが何故か動かない。 泣きそうな顔で兄を見る妹。 兄、田中は怪しく光る紅い目でそれを見ていた。 アクセル全開で猛スピードで走ってきたトラックは美穂を跳ね飛ばし引きずってT字路を曲がらず住宅に突っ込んだ。 寂れた商店街のテントがはためき水が頭に降りかかった。 そして思い出したかのように爆発した。 シャッターがガタガタと揺れて店が軋んだ。 炎上したトラックは住宅もろとも黒煙に巻いてゆく。 「やったか……」 田中が禁断のセリフを吐いた瞬間、炎に包まれながら何かが飛び出してきた。 「おにぃぃぃち"ゃァァああ!!!!!ん!やっって、くれたネェ!!」 何処ぞの世界の妖精のように金切り声を上げて這い出してきたのは美穂だった。 人間の着ぐるみを着ていた化のように皮をずるずると垂らしながら叫び続ける。 「俺、田中じゃねぇーし」 騙されたのがわかったのか、美穂と呼ばれた化け物は目にも止まらぬ速さで移動し、背中から飛び出した触手で田中(仮を貫いた。 「ごふ……っ……」 信じられないという顔で血を吐いた田中(仮はそのまま全身の力を抜いて地面に崩れ落ちた。 目を虚ろにして手をふるわしながら息を閉じた兄は触手からするりと抜けて倒れた。 「ふっう、ちょっと驚いちゃったけど、人間なんてこんなものね」 胴にぽっかりと穴を開けた兄を引きずり雨の降り注ぐ道を 歩んで ーー世界が歪む 美穂は一人道路に立っていた。 「え?」 動揺して声を上げようとしたところで後ろから水飛沫を上げて走ってくるトラックに気づいた。 運転手は美穂に気づいて必死にハンドルを切ろうとするが何故か動かない。 泣きそうな顔で兄を見る妹。 兄、田中は怪しく光る"紅い目"でそれを見ていた。 アクセル全開で猛スピードで走ってきたトラックは美穂を跳ね飛ばし引きずってT字路を曲がらず住宅に突っ込んだ。 寂れた商店街のテントがはためき水が頭に降りかかった。 そして思い出したかのように爆発した。 シャッターがガタガタと揺れて店が軋んだ。 炎上したトラックは住宅もろとも黒煙に巻いてゆく。 「やったか……」 田中が"またもや"禁断のセリフを吐いた瞬間、炎に包まれながら何かが飛び出してきた。 「おにぃぃぃち"ゃァァああ!!!!!ん!やっって、くれたネェ!!」 何処ぞの世界の妖精のように金切り声を上げて這い出してきたのは美穂だった。 人間の着ぐるみを着ていた化のように皮をずるずると垂らしながら叫び続ける。 「俺、田中じゃねぇーし」 騙されたのがわかったのか、美穂と呼ばれた化け物は目にも止まらぬ速さで移動し、背中から飛び出した触手で田中(仮を貫いた。 「ごふ……っ……」 信じられないという顔で血を吐いた田中(仮はそのまま全身の力を抜いて地面に崩れ落ち……なかった。 まるで空気を貫いたように触手は田中を突き抜け置かれた自動販売機に激しく打ち付けた。 2度目どころか何度も繰り返してきたこの世界において田中は唯一未来を見ていた。 幻術使いである田中にとって幻術を見破ることのできない怪物など倒せない敵ではない。 貫かれる瞬間、幻と実体を入れ替えた。 わざわざ『幻だ』『何処を見ている』などと幻術の強みを潰すような助言を敵に話してやるほど田中(仮は優しくなかった。 音を消し透明化して素早く背後を取った田中(仮は、化け物を殺すように手配した改造チェーンソーを起動して頭から足まで化け物を真っ二つにした。 ーー世界が歪む 雨は止んでいた。 タコの触手のような物を生やした化け物はとんでもないショックを受けたかのようにたったまま、息絶えていた。 人間の女に擬態していた化け物は死んだことにより体表の色を白く変色させ骨がなくなったかのようにずるりと乾いた地面に崩れ落ちた。 田中(仮はスマートフォンではなくガラケーを取り出すと何処へ連絡を取り始めた。 するとすぐに一斉メールに連絡が入る。 『お知らせします。E-13エリアにてクリーチャーが討伐されました 討伐ランク5 クリーチャー種 討伐者笹隠 誠人』 死んで変色した化け物のそばには電柱が立っていた。河上区大和町E-13と書かれた電柱から田中ーー幻術能力者 笹隠 誠人は口笛を吹きながら去っていった。
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