迷惑メール

『貴女の指定口座に五千万円振込む用意が出来ました』

メールの着信音がして、ボックスを開いてみれば まただ。

「…ムカつく」

今朝から私用携帯の迷惑メールが止まない。
ざっと20通を超えている。

あれこれと対策を講じても、結局 手を替え品を替え 送られてくる迷惑メール。

いっそのことアドレスを変えればよいのだが、このアドレスを登録している様々な方面の変更手続きが面倒で、つい そのままにしてしまう。

無反応にしていれば、どうせ送る側も二、三日程度で手応え無しとみて 静かになるだろう。

「くだらない悪戯はやめて、もっと他に楽しいことを見つければいいのに。バカみたい」

仕事の合間の僅かなコーヒータイムに、不快な気分で携帯の電源を落とした。

退社時刻を過ぎ、慌てて片付けを済ませると駅へと急ぐ。

仕事を持つ母親は、今からが戦争だ。
愛する夫と我が子の為 頑張らなくては。

今日は、電車を降りたらスーパーに寄って買い物をして。
家に帰って夕飯の支度、それが終われば塾へ子どもを迎えに行って、夕飯を済ませた辺りで夫が帰宅。それから…

電車を待つホームで 今晩の行動の段取りを考えながら、いつものように何気なく携帯を起動させた。