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<クズオトコ>
1分前まで恋人だと思っていた男の言葉を脳内で処理する事ができないでいる。
1分前とはつい今しがた別れを言い渡されたから。
「ごめん別れよう」
いつもの待ち合わせのカフェ。
今までならこのあと食事をしてホテルに行った。
付き合い始めて半年、そろそろ彼の部屋に呼ばれたりするのかな?とか思っていた。
でも現実は・・・
「理由は?」
「彼女を大切にしたいから」
理解不能な答えが帰ってきた。
「彼女?二股かけてた?」
彼は「う〜ん」と唸ると頭を掻き始める
「そこはハッキリさせておきたい。じゃないと納得出来ないから」
別れ話をされて泣いたりしても相手が引いて面倒くせーと言われるだけだ、経験則でわかっている。それならキッチリと理由を知っておきたい。
次こそ選ばれるために
「史(ふみ)には悪いと思っているんだけど、半年前に彼女と喧嘩してむしゃくしゃして誰でもいいと思って史を誘った、一度だけと思ったけど史とのエッチが気持ち良くてズルズル続けちゃって、彼女との結婚の為に貯金しないといけないからホテル代で無駄使いできないんだよ、もしよかったらホテル代を史が出してくれるか史の部屋に呼んでくれるなら続けられるんだけど。史の体は好きだから条件を飲んでくれたら続けてもいいよ」
話を聞けば聞くほど醒めていく。
こんなクズを一時でも好きだったんだ。
理由をきちんと聞いてよかった。
何も言わず、というか言いようがなくて俯いていると何を勘違いしたのか
「じゃ部屋に行こうか、改めて宜しくな」
あああ・・・本物のクズだ
こんなやつに選ばれなくてよかった
別れ話を出してくれたのはありがたかったと思うことにしよう。
「最初からセフレだったってこと?」
「彼女より身体の相性は圧倒的に史の方がいいし」
「ただ彼女はもう5年も付き合っていてそろそろ結婚しないといけないっていうか、親も早く結婚しろって煩くなってきたし義務みたいなもので、彼女より先に出会っていたら史と結婚してたと思う」
「脳みそ腐ってんの?」
「えっ?」
今まで自分を殺して相手の言う通りにしていた。
「先に出会わなくてよかった、お前みたいなクズと結婚なんて無理だから」
「私の部屋をヤリ部屋にしろ?頭湧いてんじゃない?」
怒鳴り声にも近い私の言葉で周りにも丸聞こえになりクズが慌て出す。
いつもの自分なら大事(おおごと)になる事が嫌で一人で泣いていたが、もう何度目かの失恋で仮面も何もかもが落ちてしまった。
手元のグラスに入っていた水をクズに向かって派手にかける。
「二股クズ野郎!二度と目の前に現れるな!」
と怒鳴りつけると周りにいた人達の視線が一斉にクズに向くと、
「悪かった!ごめん!」と、言いながら走り去っていった
その時
目の前に金色の玉が転がってきた。
年末などに商店街で行われているガラポンから出てくる玉のようだ。
実際は白い色の玉しか見たことがないからこの玉がガラポンの玉なのかは定かではないが、どちらにしてもこれがここに転がってきたことの方が謎な気がする。
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