ワケありお嬢様は今夜も俺のベッドで眠る。

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いつのまにか座り込んでいて、床の冷たさが尻に伝わってきていた。はあはあと肩で息をしていると、植物の新鮮な香りが鼻をくすぐった。呼吸を整えてから花撫が話し始める。 「・・・私の存在を公表してそれが落ち着いてから、取材旅行で兄と日本全国を回ってたの。兄は親の自営業を継ぐために、勤めてた会社を辞めたばかりで。ネット記事の取材にはネット通話で答えてた。涼しい季節になっていたから血圧も下がり過ぎることなく体調は良かったんだけど、取材旅行が終わってから疲れが出たみたいで体調を崩して、都会(こっち)に戻る前にしばらく実家にいたの。」 「・・・そうだったのか。」 「実は、取材旅行に出発する前に律に手紙を出したんだ。連絡先を書いて、『帰ってきたら一緒に暮らしたい』って書いたの。」 驚くべき事実に飛び上がりそうになる。もし今体育館でトランポリンをしていたら、天井に頭をぶつけてしまったかもしれない。 「!?そんな手紙、俺、知らないけど!?」 「ごめんなさい。住所を間違えていて宛先不明で戻ってきていたのを都会(こっち)に戻って来た昨日知ったの。姉と妹は忙しくなり過ぎていて、郵便物がぐちゃぐちゃになってしまっていて・・・本当にごめんなさい。」 花撫は泣き出した。 「そんなひどいミスしたなんて思ってもみなかった私は、連絡もないし、律の中では私とのことはもう終わっちゃったのかと・・・。」 「そんなわけないだろ!!毎日花撫のこと考えてた。」 聞き捨てならない言葉に思わず花撫の腕を強く掴んでしまった。その腕を彼女がグッと掴み返してくる。
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