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«1» 運命の出逢い。
車の中に
小さな虫が入り込んだのが気になり、
後部座席にいたトオルはパワーウィンドのスイッチに
手をかけた。
それは商談、いや交渉の帰り道で、
赤坂の入り組んだ路地を走っている時
細く開けられた、少しスモークのかかった
その窓から、虫が飛んで行くのを目で追っていた。
その視線の先に女性、いや女の子が
老夫婦と楽しげに話ている姿が飛び込んできた。
トオルはその笑顔に吸い込まれていく。
そんな感覚か、いや違うもっと凄い衝撃か。
1度出て行ったはずの虫が
再び入ってきた事さえわからなかった。
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