しあわせな服

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私たち型落ち服は、クローゼットの中で肩身の狭い思いをしていました。 なぜなら、流行服が、毎日いじめてくるからです。 「ほほほ。あんたたち、今日もまた、ご主人さまに一瞥もしてもらえなかったわね」 「花柄のパンツなんか、今どき誰も履いていないわよ。ださっ」 「かわいそうな、ドルマントップスさん。2回着てもらっただけで、すぐ飽きられちゃったわね」 「ご主人さまも、早くこの子たちを処分してしまったらいいのに。そうしたら、私たち、この中でもっと広々と暮らせるのに」 どんなに酷いことを言われても、私たちは耐えるしかありませんでした。私たちが流行服だったころ、私たちも型落ち服たちに同じことを言って、いじめていたからです。自分が辛い立場になれば、その気持ちが初めてわかるというものです。その頃の型落ち服たちは、メルカリやブランディアで売られていきました。
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