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「テル!」
「はい!」
テルがすぐ2階から降りてきた。畳の張替えをするかどうか、2階の各部屋の検分をしていたところだ。もしやるなら今の内に取り掛かりたい。12月になったら畳屋の平ちゃんも忙しくなるから商売の邪魔をしたくない。
「忙しかった?」
「いえ、畳をどうしようか考えてたとこです」
「一緒に見てあげる。優作は?」
「今日は買出しの当番で」
「そう」
「ただいま帰りましたぁ!」
優作が帰ってきた。テルはこれ幸いと1階に下りようとした。
「どこ行くの?」
「優作が来たんで呼びに行こうかと」
「優作! 上がっといで!」
「お嬢? 待っててください、買いもんしたのをしまってるんで!」
「俺が代わってきますよ」
「いいわよ、待つから」
もう畳の検分も終わっている。今年は替えないことにしたのだ。だから自分が2階にいる意味はあまりない。出来るならお嬢と優作の話をする場にはいたくないと思っている。きっと何かしらトラブルに巻き込まれるような気がしてならない。
トントントン、と小気味のいい音がして優作が上がってきた。
「ちょっとお座り」
「なんですか」
「今テルに聞いたの。明後日なごみ亭で騒ぐんだって?」
「はい! お嬢も来るんですか?」
「行かないわよ。そうじゃなくて。ジェイとの話、どうなってんのか聞きたくてね」
「ジェイとの話、ですか?」
「そう。私、頼んだわよね?」
「そうですけど」
優作はテルをチラッと見た。
(まさかテルさん、チクったんじゃ……)
「こら、どこ見てんのよ。テルにね、立ち合いになってもらおうと思って呼んだの」
「た、立ち合い、ですか!?」
テルの方が泡を食う。
「そうよ。今から言うこと、テルもよく聞いててちょうだい」
「は、はい」
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