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取引先の会社からの帰り道、急に土砂降りの雨が降って来た。
さっきまでは晴れていたので傘など持っておらず、私は丁度通りかかったカフェへと逃げ込んだ...
カラン、カラン...
私は鞄からハンカチを取り出し、鞄や服をサッと拭いた。
そしてカウンター席に座ると、店のマスターにコーヒーを注文した。
初めて入った店で、きっとこんな雨が降らなかったら寄ることもないひっそりと佇むカフェだ。
カウンター席にテーブル席は4つ、店内は静かにジャズが流れている...
マスター1人で切り盛りしているみたいだ。
「お待ちどうさま」
髭を生やした60代位のマスターが挽きたてのホットコーヒーを差し出す。
「ありがとう」
私はコーヒーを一口啜る...冷えた体に優しく染み込む、こんなに美味しいコーヒーは初めてだ。
店の奥のテーブル席に年配の女性客が居るが、客はその女性と私だけだった。
「..やみそうもないなぁ」
私は外を見ながら独り言のように呟いた。
「すぐ止むよ」
聞こえていたのかマスターは私ににっこり微笑むと、そう話した。
カラン、カラン...
客が来たようだ。
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