ユキヒョウ

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ユキヒョウ

十二時班の班長は、ユキさん。 歳はリーダーよりもサクさんよりも上。 シマさんやコウガさんよりは下。 勤務時間の交代で。 十二時班とは毎日関わるけど。 引き継ぎ連絡をするのは毎回。 班長でも副班長でもない。 若手が来る。 十二時班は実力主義で。 班長が一番上手くて。 一番飛んでいる。 班長のユキさんと。 副班長のヒョウさん。 この2人を超えられる人は。 4班合わせてもなかなかいない。 連携の上手さは。 リーダーとナツさん以上。 2人はユキヒョウと呼ばれてる。 実はきょうだいだという。 と言っても。 生物学的にではない。 同じ孤児院に拾われて。 それぞれ寄宿学校へ入り。 それぞれ掃除屋になった。 書類上のきょうだいらしい。 副班長のヒョウさんは。 いつもユキさんについている。 ユキさんは。 飛ぶ以外の仕事をなかなかしない。 仕事が終わるといつも。 装備を全部外して。 髪さえ解いて。 どこかへ行く。 通信機も持たないで行く。 それでもゴミが降った時に。 ちゃんと出動できるのは。 ヒョウさんが通信機を持って。 ユキさんについているから。 今日もまた。 断続的にゴミが降り続いて。 十八時班に替わるギリギリまで。 仕事で飛んで。 終わるとすぐに。 装備を外す。 ズボンのベルトまで外して。 シャツのボタンを緩めて。 木の椅子に座って。 一息着く。 「ユキ」 ヒョウが水と。 小さな瓶を持ってくる。 「大丈夫。そんなにひどくなってない。  休めば治るよ」 ユキはそう言って。 耳に手をやる。 「触るな。  赤くなってる。  ひどくならないうちに、  飲んでおいたほうがいい」 ヒョウは瓶から錠剤を取り出し。 水と一緒に渡す。 ユキは渋々受け取った。 ユキは。 金属や、電子機器や、化学繊維に対して。 アレルギーのような身体反応が出る。 長時間触れていると。 皮膚が赤くなり。 悪化すると発疹になったり。 爛れたりしてくる。 掃除屋をやる以上。 それを避けては仕事にならない。 薬を飲んで抑えながら。 身につける時間を減らすようにして。 なんとか対処している。 自分だけではできないことも多いが。 弟のヒョウが世話を焼いてくるので。 大きな問題にはなっていない。 薬を飲み終えると。 ヒョウは軟膏の瓶を取り出した。 「大丈夫だってば」 「今日はつけてる時間が長かった。  悪化してからじゃ遅い」 有無を言わせず。 ヒョウは勝手に軟膏を手にとり。 反対の手でユキの髪をかき上げ。 赤みを帯びた耳に塗っていく。 ユキは渋々目を閉じて。 されるがままに薬を塗られる。 ヒョウの手は。 いつも優しい。
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