ひとつしか食べてないのに

1/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

ひとつしか食べてないのに

私が、まだ幼い日の話である。 みかんが無くなった。 母に、ひとつしか食べてないのに、みかんが無くなったと話したら、空になった箱を調べ、納戸、おしいれ、台所とひとしきり探したあと、 ふと、思いついたように さっきもひとつ食べたべ? うんと返事をすると、 今朝もひとつ食べたべ? うんと返事をすると、 昨夜もひとつ食べたべ? うんと返事をした。 これで、わかった。1回にひとつずつ食べたべ? うんと返事をした。 母が笑った。 1回にひとつずつ食べて、食べ尽くしてしまったのである。だが、幼い私には、ひとつしか食べてないのに、無くなってしまったと思えたのである。 母は、笑って、探すのをやめ、 次の1箱を買ってきてくれた。 みかんは大好きで、手が黄色くなるまで食べたものである。 とっつぱれ
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!