待つ

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「今、要るかな?」・・いや・・「少し考えてみようかな?」  これまでの人生で、このような選択に迫られたことなど、皆さんも幾つか経験されたことでしょう。  でも多くの皆さんは「その時の状況によって、判断は違ったものになる」とおっしゃいます。 私もそれが尋常な回答だと思います・・ただし過去のトラウマが無かったとすればですが・・  もし、その判断に急を要する事実が伴わない限りの事案では、その決断にことごとく時間を頂くようにしてきたのが私なのだ。 「今なら良い値で下取りしますので、新車を考えてもらえませんか?」とセールスに買い替えを勧められたとします。  こんな時、私は数日考えるようにしている、待っている間に徐々にその欲望が薄れ、冷静になれるからだ。 挙句は、「今乗ってる車、これまで一回も故障したこと有れへん・・そら2万キロしか走ってないもんな・・勿体ないんと違う⁉」と、むしろ今の車に愛着を感じてしまったりもする。 だから、現実、今年も車検を受けることにしたのである。  私は8歳のあの時だ・・母に手を引かれたあの日から72歳のこれまでが、ずーっとそうだった。 あの日もそうだ、ウインドで見た懐かしのオープンリールのテープデッキ、喉から手が出るほど欲しかった。 でも、私の中の誰かが「ちょっと待って!ホントに必要か、よう考えや!」とアラートを発信するのである。 なるほど・・ これで分かった! こんな性分の私を創造し、親父の真似事までやらせてくれたのは、あのチャチな汽車を買ってくれた親父の仕業だったんだ。  ―完―
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