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お姉ちゃんの受験
私には親父(おやじ)の面影は全く無い。
8歳の頃、母親に連れられ生き別れとなってから、逢った事が無いからだ。
私が72歳になった今では、その両親もこの世には居ない。
親父の面影すら無い、そんな私が一家の所帯主として父親をやってしまったから不思議である。
「お父さん、翔太が新しいファミコンが欲しいんやて」
私には云いにくいのか? 息子の翔太が家内にゲーム機を無心したようだ。
「お婆ちゃんに買うてもろたやつまだ有るやろ・・どないしてん?」
1年前の翔太の誕生日にプレゼントとして、同居しているお婆ちゃんが買って貰ったものだ。
「カートリッジの接触が悪いねん」
家内の傍にいた息子の翔太が言った。
「それやったら、カートリッジが悪いんと違うんか?」
「カートリッジは悪う、無いねん!」
「そんなこと、なんでお前に分かるねん⁉」
「そやかて、そのカートリッジ・・友達とこでやったら使えるもん!」
さすが私の息子である、11歳にしてはしっかりと裏をとっている。
「もう直ぐお姉ちゃんの受験があるんやろ・・それが終わってからにしたらわ?」
「お姉ちゃんの受験と、僕のファミコンと何か関係あるの?」
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