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白い小さな蛇。
力もない、神を名乗るにはまだ若い白い小さな蛇が俺だった。
大神さまの御使いで地に降りた時、
蛇だと言うだけで人の子らに木の枝で突つつかれ振り回され、理不尽にも殺されそうになっていた。
───お願いよ、殺したりしないで。
白い蛇は神さまの御使いなのよ。
ひとりの子供が飛び込んで助けてくれた。
子供らに傷つけられ鎌首をもたげていた俺は、助けに入った子供を人の子憎さのあまりにその小さな腕に思い切り噛みついたのだ。
「……白い蛇さん、みんなが意地悪してごめんね。痛かったでしょう?」
その子供は噛まれた腕から血を流しながらも、俺の体から噴き出す血を拭ってくれた。
その途端、俺は子どもに噛みついたことを後悔した。
小さな子供の噛まれた腕には、ふたつの噛み痕、神に仇なした印が残ってしまったのだ。
子供は神に仇なした者として、これから不幸な一生を送ることになるだろう。
そんなことになってしまったのは俺が未熟過ぎたからだ。子供は俺を庇い守ってくれようとしたのに。
せめてもの罪滅ぼしにこの子供をどうにかして護ってやらなくては。
そう決意した俺は空から陰ながら見守り、時には人の前に姿を現して、神に仇なした印を持つ子供を守り続けた。
そして10年の月日は流れ、白蛇から龍となった俺は、いつしか人の子に抱いてはならない想いを募らせていったのだった───
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