逝く君へ告ぐ

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『対等に付き合える者がいない孤独。  それを知っているのは、僕であり君。  種族の違いも、流した身内の血も、僕と君を区切る壁となったけれど。  ああ、頼む、10年前の君。  おそらく少年であっただろう君。  家族を置いて旅に出ようとする父を止めてほしい。  そうすれば、今この時はどこかの次元でどこかの世界で訪れないかもしれない。  10年前の君よ。  君の父は僕の父を殺す。  僕はそれを聞き、君の父と君の家族と君の種族を恨む。  それが今の僕を作った。  そして、僕の父を討ったあと、父の仲間に君の父も殺される。  その恨みが、今日の君を作った。  そうだね、だからこそ僕と君は似てしまったのかもしれないけれど。  ああ、10年前の君。  君は僕に敵わない。  だから、どうか父を止め、君は研鑽を積んで僕の元に来て、友人になってほしい。  君と僕の種族が、真っ向からぶつかり合う前に』 命の尽きた肉体を前に、僕は祈る。 僕が殺してしまった君に祈る。
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