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僕は看守に聞こえるような大声で、全身で相手を威嚇するような阿澄さんに助けを求めました。彼は植田さんの両足を持つと、僕の動きに合わせてゆっくり下げていき、彼を床に座らせました。その間シャワーの水がかかったり、飛び散った汚物を踏んだりしているのですが、表情を変えませんでした。
「すみません」
「離れても良いか?」
阿澄さんにも同じような仕事があります。僕は一旦シャワーを止めて、植田さんに謝りました。
「すみません、僕の失敗です。少しお尻を洗わせてくれますか。気分悪いかと思って」
僕は一つ一つの音を刻みつけるように言いました。耳が遠い植田さんですが、左耳は比較的マシなようです。落ち着きを取り戻した彼は、頷いて立ち上がりました。
植田さんの洗体を終えると、僕たちは二人で一緒に帰ります。植田さんは独房に、僕は雑居房に。正直一人にするのは心配なのですが、植田さんは最近情緒不安定で突然暴れ出すことがあるため、本人や他の囚人がけがをしないように隔離されています。
雑居房に戻ると、阿澄さんが笑みを浮かべて迎えてくれました。
「あのじじいの相手も大変だな」
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