06. 忘れられない男

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「なぁ、杏子、やり直してみないか?」  少し困ったように眉を下げて、でも真っ直ぐな視線で光貴が私に問いかける。私はしばらく黙ってから頷いた。 「友達になってくれる?次はちゃんと順番に」 「……ありがとう、杏子。友達になろう」  光貴が笑った。初めてここで待ち合わせの約束をした時みたいに優しく笑った。 「じゃあ、とりあえず一緒に出かけてみる?土曜日予定ある?」 「無い」 「んじゃ二人でどっか行こうぜ。どこがいいかな……杏子が行きたい所に連れていきたい」  光貴が今まで見たことないくらい、はにかんだ笑顔を向けてくる。 「私、ラーメン食べたい。海が見たい。猫撫でたい」 「……尾道?」 「行く!」  私も笑って答えた。  すると光貴が私の手を引いて言った。 「友達だから手を繋いでいいか?」 「うん。でもえっちはしないよ。恋人になってからね」 「おう。そのうち、杏子の彼氏になってみせる。毎晩ヒィヒィ言わせてやる」 「私も。そのうち光貴の彼女になってみせる。お前無しじゃ生きていけないって言わせちゃる」  駐車場に向かいながら、光貴に聞いた。 「ゆいって誰?」
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