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「なぁ、杏子、やり直してみないか?」
少し困ったように眉を下げて、でも真っ直ぐな視線で光貴が私に問いかける。私はしばらく黙ってから頷いた。
「友達になってくれる?次はちゃんと順番に」
「……ありがとう、杏子。友達になろう」
光貴が笑った。初めてここで待ち合わせの約束をした時みたいに優しく笑った。
「じゃあ、とりあえず一緒に出かけてみる?土曜日予定ある?」
「無い」
「んじゃ二人でどっか行こうぜ。どこがいいかな……杏子が行きたい所に連れていきたい」
光貴が今まで見たことないくらい、はにかんだ笑顔を向けてくる。
「私、ラーメン食べたい。海が見たい。猫撫でたい」
「……尾道?」
「行く!」
私も笑って答えた。
すると光貴が私の手を引いて言った。
「友達だから手を繋いでいいか?」
「うん。でもえっちはしないよ。恋人になってからね」
「おう。そのうち、杏子の彼氏になってみせる。毎晩ヒィヒィ言わせてやる」
「私も。そのうち光貴の彼女になってみせる。お前無しじゃ生きていけないって言わせちゃる」
駐車場に向かいながら、光貴に聞いた。
「ゆいって誰?」
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