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そんな、ある夏の帰り道、
稽古後に慶太くんに誘われた私は、二人で花火を観に行くことになった。
「凛ちゃん、花火を見るのに良い場所を知ってるんだ、穴場だよ。一緒に行ってみないか?」
ニカッと笑う慶太くんに、思わず私も笑みを返していた。
「う、うん、いいけど…、服がジャージなんだけど?」
花火大会にジャージとか、ちょっとね…、キレイな浴衣女子がいっぱいいるとこだもん。
「ノープロブレムだって!行こっ!」
慶太くんに連れられて会場付近の遊歩道を歩き、続く高台に登ることになった。
それが結構な急な坂道なんですけど…、大丈夫なのかな?
「凛ちゃん大丈夫?もう少しだからね。」
慶太くんが、スッと彼の手を差し出した。
彼の大きな手が私の手をスッポリと包み込んで、私をグイグイと引っ張ってくれている。
それから少しして、高台の見晴らし台に辿り着いた。
普段はあまり人が来ない場所なのだろうか、来る途中は夏草に覆われていたけど、坂を上りきればキチンと整備されているようだった。
「慶太くん、ここって… 」
「なっ、いい場所だろ? 小さい頃、俺の秘密基地があった場所なんだ。」
「わぁっ、ここならきっと花火よく見える!ここ穴場だね〜、慶太くんっ!」
「そうだろ?俺、絶対に凛ちゃんを連れて来ようと思ってたんだ。夕陽もキレイなんだ。」
そんな慶太くんに、少しドキドキしてしまった。
こういうの、一ノ瀬先輩以来だな…。
二人で他愛もない話をしながら、花火大会の開始を待っていたら、あっという間に辺りは暗くなり、遠くから花火大会の放送が聞こえ始めていた。
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