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子供は好奇心旺盛
「ママ!絵本読んで。」
子供はカラフルに描かれた絵本を見て指差しながら母親に問いかける。カラフルな絵本は子供の好奇心を刺激する。
「ママ?どうしてお空は青いの?」
「そうね。お日様の恵みのおかげよ。」
「じゃあ、今日は恵みがないから暗いの?」
「そうよ。お日様が隠れているのよ。」
「そっか、早く天気良くな~れ!」
子供は目に入ったもの全てに関心を向ける。
「ママ?この白いのは何?」
「これは雲よ。ここから水が落ちてきて雨になるのよ。」
「そっか、今日はこの白い?のが、お空いっぱいに広がっているの?」
「そうよ。お空は、真っ白ね。」
「ママ?えっとね、一、二、三…七つ?色のついている長細いこれは何?」
「これは、虹って言うのよ。」
「うわぁ、こんなの見たことない。」
「後で見せてあげるわよ。」
「本当?やった!じゃあじゃあママ?この黒いのは何?」
「これはカラスっていう名前の鳥さんよ。お空を飛ぶことができるの。」
「すごいね。お空を飛べるの?」
「そうよ。」
「僕達は飛べないのにすごいね。見てみたいな。」
「せっかくだから鳥さんも後で見せてあげるわよ。」
「ママ?これは何?」
「これは木よ。お部屋にも小さい木が置いてあるでしょ。」
「すごい!こんなに大きくなるんだ。」
子供は見たことないものに次々と興味を示す。矢継ぎ早に絵本の中を指差し質問する。
「ママ?」
「何?」
「絵本の中の子はなぜ船に乗ってないの?この茶色って土?土の上に立っているの?」
「この時は土の上で暮らすことができたのよ。船上で住んでいるのは、雨がやまないから。」
「どうして雨はやまないの?」
「それはね、人がお日様を怒らせてしまったからよ。」
「お日様怒っているの?」
「そうね、お日様を怒らせたらお日様は人を暑くしたの。人はお日様から隠れようと雲でお空を覆ったのよ。そうしたら、お日様からは隠れられたけど世界中で雨が降り続くようになったの。」
「仲直りできないの?」
「そうね。少しずつ仲直りしているのよ。でも時間がかかるわ。」
「大丈夫、きっと仲直りするよ。僕に任せて!」
降り続ける雨。水没した都市。船の上でなくては暮らせない現在、太陽の光が届かず、かつての輝きを失ってしまった地球。生き残りも随分と少なくなってしまった。復興にはどれくらいの時間がかかるのだろう?そもそも、人類は生き残っていけるのだろうか?
まだ現実を理解できない我が子に対して母親ができることは平和で穏やかだった日々を伝えることだ。元の地球を取り戻すことは偉大な仕事であり、どれほど時間がかかろうと、その先に希望があると繰り返し我が子に伝えることこそが唯一母親にできることだ。
幸いなことに、この船には様々な資料が積んである。まるでノアの箱舟のようだ。伝える手段はたくさんある。
しかしながら、依然として分厚くドス黒い雲が空を覆っている。雨が降りやむ気配はない。
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