夜の公園

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 疲れていた。明日は休みだ。このまま眠ってしまいたかった。  しかし、山井はもそもそと起きだして服を脱いだ。眠れそうにない。  この単身者向け安アパートの良いところは、1Kにしては広いことだ。台所はダイニングテーブルがおけるし、風呂場とトイレが別で、脱衣所を兼ねた洗面所に洗濯機が置いてある。  電車一本で都心部に向かえるが、都境県境を3つ跨いでいるせいで、家賃が安く、広いのだ。  風呂場、しっかり足の延ばせる湯舟のある風呂場には全身が映る鏡がある。  鏡に映った自分の姿に、思わず笑ってしまう。 「襲われるわけないだろ?」  ストパーをかけるのも無駄な天然パーマ。太い眉。大きすぎる目。比べて小さすぎる鼻。分厚い唇。短い首。厚みのない胸板。太ってはいないが高校を卒業してから運動らしい運動をしていない締まりのない身体。けして高くはない身長。へその下の毛は薄く。存在感の小さいアレ。そして貧相で短い脚。  女にもてたこともなければ男に言い寄られたこともない。  公園で自分は何に怯えたのだろう。襲われそうに思えたから? いや怯えたのではない。ただ恥ずかしかったのだ。  高校時代、部活の仲間とAVを見た時と同じだ。  2年が始まる前の春休み。誰かが手に入れたAVを、山井の実家のリビングでみんなで見た。  両親と兄と妹は北海道の大学に行った兄に会うという名目の旅行で不在だった。山井は部活を理由に行かなかった。  部活。写真部の合宿など、よほど北海道の観光地へ行った方が良い写真が撮れるものを、その鑑賞会のために…。  リビングのソファー周りをお客さんたちに譲り、山井はひとり、ダイニングの椅子に腰かけて、少し離れてみていた。  次第に興奮してきた自分と仲間たちの空気に恥ずかしくなった。見られたら嫌だと思った。そして仲間の様子を見てはいけない気がしていたたまれなかった。  そういえばあの日のAVでも女優が二人の男に挟まれていたなと思い出した。
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