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「朔ちゃんが間違えてくれたおかげで、ヤキモチ焼いて貰えたんだ」  臣はニマニマしながら側に寄ってきて言った。 「お、俺は別に……」 「僕のこと好きになった?」  ずいっと目の前に顔を近づける。いたずらっぽく臣は微笑む。 「ねぇ、なったでしょう?」 「……なっ」  俺が言い終わるのを前に、臣の唇と俺の唇ははゼロ距離になった。なってない、なんて言う隙も与えずに。 「ここ、道のど真ん中なんだけど」 「誰も見てないよ。だから朔ちゃんの顔が真っ赤なのも僕にしか見えてないよ」  俺は咄嗟に顔を隠す。 「そういうことをいちいち言うなよ!」 「だって可愛いんだもん」  臣は立ち上がって体についた砂や埃を払い終えると、俺の手を引いて立ち上がらせた。そしてその手を握ったまま臣は言った。 「大好きだよ、朔ちゃん」  嬉しそうな顔で微笑む臣の表情は、いつもの臣だった。だけど、もうそこにこだわらなくてもいいような気がする。まだ慣れないけど、目の前にいる臣はどれも本物の臣なんだ。  俺はポケットから財布を取り出し、しまっていた手紙を取り出した。 「これ、返す」  子供の頃に、臣に書いた手紙。書いた時の事は思い出せないけど、ここに書いてあることに間違いはない。 「臣が持ってて。俺は今も同じ気持ちだから」 「……うん」 「でも、その時の好き、とは違う……かも」  臣が顔を上げる。 「どういう意味?」 「だからぁ、そういう意味」  熱くなる頬を見られないように腕で隠したが、その腕は臣によってあっけなく掴まれ外されてしまう。 「ちゃんと、言って」  真剣な瞳が熱っぽく俺を見る。握られたままの腕に臣の体温を感じる。触れられるのは初めてじゃないのに、なんでこんなにドキドキするんだろう。気恥ずかしくて、見つめ返す事ができない。期待に満ちたその瞳に俺は応えたい。 「……すき」  返事の代わりにキスの応酬が俺を襲った。額やらほっぺやら首筋やらに遠慮なく唇をくっつけてくる。 「だから!道の真ん中ですんなっつの!」 「家ならいい?」  俺達の横を通り過ぎていく人達は、皆一様に見て見ぬふりで去っていく。大人の対応に感謝するしかない。 「あんましつこくすんなよ」  臣は期待と欲望が入り混じった顔で「早く帰ろう」と、俺の両手を引いた。  きっと静止しても無視されるんだろうな、と端から諦めつつ、俺は臣に手を引かれてアパートまでの道を歩いて行った。
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