一.

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一.

 キラキラ、キラキラ。幼いころ、キャンプに行くのが好きだった。夜になれば、空には星が輝く。あるとき、不思議におもったものだ。懐中電灯の光が、その夜空まで届くことを。  キラキラ、キラキラ。都会、いや、街中では生活の光に埋もれてしまう自然の空を、くさっぱで寝ころがってでも、釣りができる河原に座ってでも見るのが、好きだった。  あの夜空は、間違いなく、その一瞬だけだった。 ***  ガタン、ゴトン。もしくは、車輪で体が揺れる感覚。電車に乗っていれば、音がしたり振動を感じるものだが、この空間には存在しない。  代わりに、ゆるやかなメロディが響く。音楽。不思議と、その音色をずっと前から聞いていたような、あるはずがない記憶を上書きしてしまいそうになる。  そんななか、誰かの声が聞こえてきた。暗闇がうっすらと光をともなう。 「ねぇ、ねえったら」 「ん……」  呼びかけられながらも、目を閉じた少年は小さくうめくだけ。ミルクティー色をした髪は電車の振動で少し揺れるだけで、彼は起きそうにない。  それを見たもう一人の少年は、仕方ないな、とばかりに、息をつく。
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