流星群が収束する地へ

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 案内されたのは、先ほど遠目に見た軍用車の列の中の、パラボラアンテナを積んだ車両だった。見たこともないモニターや装置が並び、そこに居続けるだけで妙な汗が頬を伝うような、事務的なひりついた空気感が車両内にあった。 「さて、タッカー」上官は僕を車両内のモニターの前に座らせると、装置の電源をあげた。  同時に、300ヤード離れたところで定例祭が開始されたようで、スピーカーで増幅された声が「地域住民の皆様、流星祭にお越しいただきありがとうございます。本日もわが軍が誇る天体管理装置は絶好調でございまして、保証された晴の下でまたこの会場で皆様と会えたことをとても嬉しく思います」と話している。声は弾んでいるが、そこに嬉しさという感情が混じってないのは明白だった。  声の主はジムなのではないかと思えたが、装置を通すと誰の声も似たようなものに聞こえるのだろう。  上官がつづける。 「君の故郷にも似た催し物はあっただろうが、君たちが流星群だと思ってありがたがっていたものは、事実とは大きくかけ離れている」  はじめは状況が理解できなかった。しかし、だんだんとぼやけていた輪郭がハッキリしてくるように、僕の頭の中にとても残酷な事像が描かれ始めていた 。   必ず晴れる日なんて天体はしったことでもないし、流星群だってその日に僕たちの頭上を通過するなんて決めごとを守るわけがない。締約できるわけがない。 「この流星祭というのは、地域住民へ我々の武力をアピールして国防への不信感を抱かせないこと、未来を担う若者へ軍への志願を促すことが主な目的だ」  モニターの装置が起動し、青だったり緑だったりと目が痛くなる文字列が映し出され、モニターのひとつに国の近辺を拡大した地図などが映った。上官はつづける。 「そしてもう一つ。我が国が我が国を護るため、指定した地点への攻撃を行うためのものだ」  ガコン、ガコン、と室内に機械的な音が連続して車内を叩き、揺れに驚いた僕は思わず上官から目をそらして外を向いた。  トレーラーに搭載されていたコンテナが片方だけが持ち上がり、全ての車両が同じ方向にコンテナの片側を向けている。その方角は、記憶が正しければ僕の故郷と同じ方角だ。
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