act40. ホテルにて *

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 ちょっとした、いたずらごころが働いた。  思ったままに手を動かす。「おい。こら」と蒔田が反応する。  知るものか。  からだは正直だ。本能は、言葉では消せない。それに。  してもらってばかりだから、すこしはお返しがしたかった。  表面上は、唯我独尊。思うがままに生きていそうな蒔田。その内側は驚くほどのフェミニスト。相手に合わせすぎるがゆえに他人を近づけないのではと穿ったほどだ。  彼女は、布団に、潜り込んだ。もう行為を止めるつもりなどない。  布団のなかは熱い。それにまだ互いの生々しい匂いが、充満している。彼女はその空気をめいっぱい吸い込んだ。  手と口と頭とを駆使する。性行為は頭を使う。  これと思った方向があれば、迷わず突き進む大胆さと。  微妙で繊細な変化を見逃さない、知略を常に要求する。彼女は蒔田を攻略したかった。どうやらその努力は実り蒔田が、うわずった声をあげ始める。  押さえつけていた手に、力が入る。掴まれてもいい、と彼女は思った。  どんどん膨れ上がるこの想い。好きなように生きて、と彼女は思った。
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