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「いけない子だね」
じっと見詰められて全身が粟立つような感覚はなぜなのか。
ひたりと頬に触れる大きな手の熱さに安心できなくなったのはなぜなのか。
「俺に嘘吐いてることあるよね?」
「嘘なんて……」
確信しているような眼差しにリエは言葉に詰まる。
確かに名前を偽った。一夜限りの夢だと思ったからだ。それほど責められるようなことだろうか。
「ねぇ、リエちゃん?」
リエはぞっとした。漢字は本名と同じだが、すぐにわかるような読みではない。他にわかるようなものはなかったはずだ。
それなのに、いつから、あるいは、どこまで知っているのだろうか?
いよいよ恐ろしくなって逃げだそうとしたリエの体は俯せに返されてしまった。
「嫌だって言っても逃がしてあげないって言ったよね?」
「それは……」
その場を盛り上げるための言葉だと思ったなどとは言えずに口ごもったリエはこの場を切り抜ける方法を必死に考えようとしていた。早く逃げろと頭の中で警鐘が鳴っている。
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