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 時折、彼女はあの日の夢を見た。 「おい大丈夫か、何があった?」 「う、ぇ」  駆けつけてきた人物が有機納(ゆうきな)の背をさすっていた。妙にその手が熱く、生きた人間であることがありありと伝わってくる。  ―――獄中の死体とは存在を異にして。  続けてえずくなか、視界が朦朧と闇に溶けていこうとするなかで、必死に男の袖を掴む。そうして有機納は呻くように彼に伝えた。 「ちょうこくとうを…、取って……」
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