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番外編『Happy Halloween アーサー&瑠衣Ver.』
「きゃああ、アーサー様〜 タキシードが似合い過ぎます♡」
「麗しのドラキュラ伯爵♡」
「色気あって良いわ♡」
ハロウィンのお菓子配りを手伝っていると、子供の歓声より、引率の母親の黄色い歓声が鳴り響くって……どうなっているんだ?
ハロウィンは、子供のための日だったよな?
「さぁさぁ、お子様と気をつけて(もう)お帰り下さい」
「ああん、つれないお方」
うっ、香水の匂いがキツいな。
扉を閉めた途端、げっそりとした。
駄目だな。俺は瑠衣しか眼中にないから……人工的な着飾った匂いを不快に思ってしまうんだ。
「ふぅ、やれやれ、やっと終わった」
ドラキュラの衣装のまま階段を上がると、廊下の先をドレス姿の女性がパタパタと横切った。
ドキッとした。
水色のドレスにティアラをつけて……まるで舞踏会帰りの姫のようじゃないか。
さっき瑠衣しかときめかないといったクセに、なんだ、なんだ? この胸の高鳴りは――
「君、待って!」
「……!」
俺の声に怯えるように駆け込んだ先は、おばあ様の部屋だった。
一体、どこの令嬢だ?
トントン――
「どなた?」
「おばあ様、アーサーです」
「あら、合言葉は?」
「ん?」
おばあ様ってば、俺をまだ子供だと? 参ったな。
「Trick or Treat!」
子供のように大声で告げると、すぐにおばあ様が出てきて、俺を手招きした。
「うふふ、いい子のアーサーには特別に、これをあげましょう」
「ん? ガラスの靴?」
「あなたの大切な人の落とし物よ、うふふ♡」
「うふふって、おばあ様、まさか俺の瑠衣で遊んでいませんよね?」
「あら、ハロウィンですもの、無礼講よ、ねっ! ドラキュラ伯爵」
「ふっ、必ず探して参ります」
「ゆっくりしていらっしゃい。今日の瑠衣は格別よ」
俺は黒いマントを翻して、庭へ駆けだした。
「瑠衣、瑠衣……! どこだ?」
先ほどの水色のドレスを着た姫は、君だな。
俺と君は、磁石のようにくっついて離れないから、分かるのさ。
君のために建てた小屋に入ると、ドレス姿で蹲っている瑠衣がいた。
「アーサー! こ、こないで……恥ずかしいよ」
「どうして、よく見せて、あぁ、なんと麗しい……」
よく澄んだ湖のように落ち着いた水色の、クラシカルなドレスを着た瑠衣の姿に、胸が高鳴った。
「近寄らないで……」
「よく見せて、どんな姿でも俺の瑠衣だよ」
頭にはティアラをつけピンでまとめているので、髪をアップしているようにも見える。
「こんな清楚な姫は、英国中探しても見つからないよ」
俺は瑠衣の左足をそっと持ち上げて、ガラスの靴を履かせた。
「やっぱり、ぴったりだな」
「あ……歩き難くて、脱げてしまったんだ」
「足を痛めてないか」
そのまま瑠衣の足の甲に、恭しくキスをした。
すると……瑠衣は耳も首も真っ赤にして、微かに震えた。
「駄目だよ。そこは……君がそんなことをしてはいけない」
足の甲へのキスは、相手を崇める気持ちを示している。確か親愛と服従の意味が込められているんだったな。
「瑠衣姫、ドラキュラはあなたに服従します」
それから瑠衣を優しく抱きしめた。
「瑠衣ご機嫌斜めだね?」
「……さっき……少しだけ妬いてしまったよ」
「何に?」
「気付いてないの? あんなに奥様方にモテていたクセに!」
「……へっ? あぁ、あれか。可愛い嫉妬だね。嬉しいよ」
なんと、これは最高のハロウィンじゃないか。
恋人が俺のために美しいドレス姿になってくれ、可愛い焼き餅を焼いてくれる。
「可愛い瑠衣……」
俺は、もう一度瑠衣を抱き締めた。
深く強い抱擁で、全身に愛を伝える。
耳元で囁くのは、どんな時も変わらない愛の誓い。
「瑠衣……俺の瑠衣……ずっと愛してる」
「アーサー、僕のアーサー、大好きだよ」
その晩は清楚なドレスを着せたまま、瑠衣を抱いた。
「噛んで……所有の証をつけてよ」
いつもなら絶対に聞けない、積極的なお願いだ。
「御意のままに……」
今宵の俺は、ドラキュラ伯爵。
瑠衣を愛すことが、俺の全てだ!
「Happy Halloween! I love you whatever you are!」
どんな君でも……いつも愛しているよ。
あとがき
****
ランドマークでもHappy Halloween!
アーサーが2位、瑠衣が3位でした。
この二人は正統派ハロウィンで書いてみました。
アーサーのドラキュラはカッコイイでしょうね。
瑠衣はシンデレラのような出で立ちです💕
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