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16.変態→友情?
風が吹けば土埃が立つ。
乾燥した大地なら尚更だ。
「稽古するか」
先日とは打って変わって、エトが黒剣を手に笑う。
「ふん。精々、手加減するなよ」
僕はこの数日で、幾分か手に馴染んだ剣を握る。
――僕と彼の間には、友人とも言える関係が構築されていた。
僕は、勉強が苦手な彼と共に学ぶ。
オーガやグール、ドワーフ等。
種族によって大きく違う言語や文化を、だ。
新しい知識に、僕は夢中になれた。さらにエトの『モチベーション』とやらになったらしい。
対して、彼は僕に剣の稽古を付けてくれる。
悔しいが実力は、あっちが上だ。
体格や、元々の才能があるからだろう。しかし、僕だって諦めない。
諦めたらそこで試合終了、ってあの人も言ってただろう?
「しない。本気でいくから」
そして静寂。
張り詰めた空気が、ピリピリと心地好い。
剣を構え、互いに隙を伺う。
――ここは正面突破を行くか。いや、弾かれるのは必至。
「ッ!」
先に動いたのは彼だ。
腕力にモノ言わせ、思い切り押し切るつもりか。
迫る切っ先は眼前。
避ける?
――僕は、そのまま突っ込む!
「!?」
明らかにたじろぐ瞳に、気を良くしつつ。
懐に入り込んで、斬り込む。
「うお、危ねぇッ!?」
間一髪。
頭上を跳躍で、超える影。
地を踏み身を翻す。
……振り返れば。
既に、数メートル先に着地していた。
「む、向かって来る奴があるかよ!」
「へぇ。思ったより俊敏なんだな」
会話なんか成り立たない。
でも改めて見合う。
次は――。
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