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ずっと喧嘩なんてしたことがなかった私たちは、上手な仲直りのしかたを知らない。
きっと尚史も私と同じように、仲直りしたいのに気まずさとプライドが邪魔して、意地を張ってしまっているんだと思う。
「もしかしてここで寝るつもり?」
そばに行って声を掛けると、尚史は私を見て少し驚いた顔をしたあと、私から目をそらした。
「そのつもりだけど」
「なんで?」
「俺、モモに嫌われてるし……それに二度と触るなって言われたから」
そう言って尚史は私に背を向けた。
私の言葉と態度は、尚史を相当傷付けてしまったらしい。
素直に謝ろうと思っていたのに、さっきまで何度も頭の中で繰り返した言葉が、どうしても出てこない。
「約束はちゃんと守ってよ。喧嘩をしても一緒に寝るって言ったのは尚史でしょ?」
また可愛げのない言い方をしてしまった。
『ごめんね』のたった一言なのに、どうして素直に言えないんだろう?
こんな意地っ張りな自分に嫌気がさす。
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