始業式

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部活に向かうというバスケ部二人と別れ、子犬さんと寮を目指します。 俺は運動自体は苦手ではありませんが、体力がなく、疲れるし面倒なのであまり好きではありません。 だって、自分から汗をかきにいっているようなもんじゃないですか。 子犬さんに、にこにこ笑顔で手をつながれ、周りから視線を感じます。 本当は目立ちたくないので手を離そうと思ったんですが、見えない尻尾を嬉しそうに振っているように感じ、そのままです。 子犬さんの子犬感に負けました。 「そういえば、明日は入学式ですよね。何かお仕事はあるんですか?」 「ううん。もうやらない」 「そうですか」 実は子犬さん、元生徒会役員の候補生だったんですよね。 出席日数の関係で役員にはならなかったみたいですけど、去年、人手不足の時に仕事を手伝っていました。 まあ、そりゃそうか。 もし仕事があったら、こんなとこで俺と仲良く手を繋いでのんびり帰ってる場合じゃないですよね。 子犬さんを部屋の前までお送りし、俺も自分の部屋に戻ります。 なんでそこまでするのかって思うかもしれないんですけど、子犬さん、親衛隊もありますし、1人にするとなんとなく危険な気がしますから。 自分の部屋に到着。ドアを開けます。 「ただいま帰りましたー」 一応、帰宅の挨拶。 誰もいないので何も返ってきませんけど。 明日は入学式で、その後、新入生を寮まで案内するのは先輩の仕事。 のはずなんですが、なんの連絡もないので今年もこのままのメンバーなんだろうな、って思っています。 他の部屋だったりすると、もう新入生の荷物が運び込まれてたりするみたいですし。 うちの高校の寮は、基本的に4人部屋。 俺の部屋は今のところ3人。 三年生の先輩が2人と、二年生の俺が1人。 普通、一学年から1人ずついるはずなんですけど...それも今更ですかね。 去年もこの3人だけでしたから。 それに、こんなメンツの部屋に新入生を入れるのは酷か。 と言いますのも、この部屋の先輩2人が有名人と言いますか、問題児と言いますか、有名な問題児と言いますか...。 まあ、そんな感じです。はい。 1人目は、不良先輩。本名は、すみません知らないです。 『学校一の不良』っていうので有名な先輩ですね。 その噂の真相は分かりませんが、部屋じゃ普通に良い人ですし常識人です。 常識人なんです。ここ大事。 部屋にいることが少なく、校内でも全然遭遇しないので、本人のことはあまりよく知りません。 あ、でも、『学校一の不良』って呼ばれてもおかしくないような、釣り目気味の強面イケメンなのに、お化けとか怖いんですよ。 かわいくないですか?ギャップがすごいですよね。 2人目は、園川葵先輩。 女の子みたいにかわいい名前ですが、本人もかわいいです。 ふわふわの猫っ毛に、大きな瞳、身長も、子犬さん以上にミニサイズ。 お人形みたいでもあり、猫っぽくもある、学校のアイドルです。 そんなかわいい見た目して、怪力なんですけどね。 外見に惹かれた野郎どもが度々園川先輩を襲おうとした結果、自分より体格のいい男に対し、恐怖感を持っているようです。 園川先輩が返り討ちにしているので、全部未遂ではあります。 俺は結構背が高いんですが、なぜか懐かれています。 以前は依存って言ってもいいくらいべったりだったんですが、最近は落ち着いているようですね。 あ、そうそう。園川先輩は生徒会役員で、庶務を担当しています。 だから今日も多分、明日の準備で忙し 「ただいまーっ!」 ...忙しくないんですかね。 「ただいまっ!」 「おっと。お帰りなさい」 どどどどっと玄関から走ってくると、持っていた荷物をその辺に放り投げ、抱き着いてきます。 「生徒会の仕事はいいんですか?」 「後でまた戻るよ。今はご飯食べに来た」 あ、ちゃんと忙しかったみたいです。 「そうですか。なんか作ります?」 「いいの?」 「はい。適当に作るので、手洗ってきてください」 「はーい」 やったー奏夜のご飯ーと洗面所に向かう園川先輩。 ...チャーハンでも作るか。
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