魔女の目の探索

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 白いテーブルに置いた道具箱から白と黄色の硝子容器が選ばれ、その粉を銀のスプーンで掬って、ひと(さじ)ずつコップに入れて水の中でジュワッと泡立て、軽くガラス棒でかき混ぜる。 「いつもはこの水を口に含んで花の想いを読み取るのですが、邪念が強過ぎるので、皆さんの力を借りてコップの水の中に呼び寄せます」  そう言って両隣りと手を繋いで目を閉じてもらい、全員の意識をコップの水に沈む花びらに集中させる。 「コックリさんみたいですね?」  正美がそう言って隣の優花も微笑んだが、千聖以外は手をしっかり握って真面目に花の想いに耳を澄ました。 「もう少し、理論的な捜査はできないのか?」 「刑事さん。貴方は夏の陽射しの強い日に、水の錬金術師と呼ばれる不思議な探偵の噂を聞いてここに現れた」 「そうよね。火の錬金術師を追っているんでしょ?」 「そうだが。それは詐欺師の隠語だと思っていた。これは魔術なのか?」 「深く考えるな。貴方は恋をしたことはないのか?」 「あるわよ」 「花を美しいと思ったことは?」 「ありますー」 「それじゃ、目を閉じてゆっくり鼻から息を吸って、そよ風のように吐き、花の想いを感じ、水に溶ける時の流れを心の中に映しこむのです」  洋介と千聖の言葉のやり取りが、催眠術のよつに耳から心に染み渡り、手を繋ぐ感触に温かい気のエネルギーが伝わって、花畑に包まれている感覚が押し寄せた。 『なんなの?花の香りがする……』
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