129人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
プロローグ・蓮の花
自称、水の錬金術師。水樹洋介はそう名乗り始め、花に纏わる依頼を受け、その想いを感じとって解決していく記憶の探偵のような仕事を始めた。
その能力を得たのは子どもの頃の出来事で、洋介が森の公園にあった蓮の花の咲く池に溺れて姉に助けられた時からである。
死の淵で心の奥底に沈めていた姉への密かな想いが泡となり、蓮の花がそれに答えるように姉の言葉を囁いてくれた。
『愛している。だから、死なないで』
水の中で姉の願いと洋介の想いが混じり合い、花の想いが水に溶けて聴こえて、いつしか花が見た映像が頭の中に再現されるようになった。
花は嘘をつかない……。
そして人も花に嘘をつけない。
最初のコメントを投稿しよう!