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「……ふーん」
母の答えは予想していた内容そのままだったので、驚きはなかった。
そもそも、そういうことを自分で口にするのは何だかナルシストっぽくて嫌だったから、代わりに母に言ってもらったというだけのことなのだ。
「……この写真のピンって、まだ残ってる?」
「まだ使ってないやつが沢山あるわよ。お父さんの分はもうお骨と一緒に保管してもらったし、あんたくらいしか使う人いないからこの際全部もらっておきな」
咀嚼したスポンジと生クリームをコーヒーで流し込みながら、私はピンを意識しつつ鼻から一息吸い込んだ。
注がれたお湯の湯気と一緒に立ち上ってきた、あの香りに再び鼻腔が満たされる。
「ところで、それは何を留めておいたの?」
「蒸らし途中のコーヒー粉の香り」
「そういうところもやっぱり似てるわ」
そう言って、母は写真の父と同じ顔をした。
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