The world is over

2/5
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 星々が静かに煌めく空の近く。向かい合い、椅子が並ぶテラス席。その場所にたった二人、私と彼は居た。  高台に位置するこの店は、無名ゆえ普段から人が疎らだ。広い店内でその様子ゆえ、テラス席は当然貸し切り状態だった。  しかし、そんな場所であっても、私にとってはかけがえのない思い出のバーである。  久しぶりに会う彼の風貌は、恐ろしい程に変化していた。必要以上に老いていたのだ。恐らく年月の何倍も。  しかし、その変化は失望をもたらすどころか彼を魅力的にしていた。不可思議だとか心配だとか、そのような感情はあまり湧かなかった。    夕方頃、メールで彼に呼び出された時は、一体何事かと思ったものだ。連絡など何年も無かったのに、突然『急な話がある』とだけ送られてきたのだから。  彼と私の関係は、恋人である。心から愛し合っていたが、親族の反対により結ばれなかった。  今、私は別の人と結婚し、子どももいる。彼はと言うと、今も天体学者として研究に没頭しているらしい。この話はさっき聞いた。  親が反対したのも、彼の職業がマイナー過ぎたゆえの悲劇だ。  今の旦那のことは、正直あまり愛していない。両親による半強制的な婚姻であったし、何より相手があまり魅力的ではなかった。  とは言え、子どもは愛しく、それなりに幸福を感じつつ過ごしてはいる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!