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がさがさとした肌触りの固い物体だ。
さすがの三郎兄上も、愛撫の手を止める。
「サブロー!
どうしたの?
へんな音がしたね」
異常を感じた獅子虎が、顔を三郎兄上の方に向けて尋ねる。
「うん、なにか大きなものが落ちてきた。
ちょっと待ちなさい」
三郎兄上が起き上がると、またどたんという、重いものが床に落下する音。
後ろを振り向くと、子供の身長ほどもある背の高い壺が倒れていた。
壺には精巧な文様が一面に彫られている。
壺の下部には村の生活をかたどったような人間の文様が、細く浅い線で一面に描かれている。
男性も女性も幾何学文様で構成されている。
例えば人間の手足は楕円で、顔は丸。
男性の胴体は四角、女性の胴体は逆三角。
女性の乳房は二つの丸だ。
壺の上部は精密な渦巻文様で埋め尽くされている。
その精密さは類をみないものだ。
じっと見ていると渦巻に引きずり込まれていきそうだった。
壺を覗くと、中にはでっぷりと太った白い蛇がとぐろを巻いていた。
赤い目を輝かせ、ちろちろと舌を出している。
「大きな白蛇だ。
この壺で飼っていたのだろうな」
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