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「え、涼ちゃん、帰っちゃうの?」
陽菜子が布団から瞳だけを覗かせ、不安そうに言った。
「帰るけど」
「そんなぁ……。ねぇ、明日、主任にどう接したらいいのか、一緒に考えてよ~」
「知るか。普通にしてれば?」
「つめた!冷たいよ、涼ちゃん!北極でかき氷食べるより冷たいよ、ねぇ!」
「……何だよそれ、ばーか」
涼はちょっと笑いながら、陽菜子のベッドに腰掛けた。
「で?いつまでそんなミノムシみたいなカッコしてるの?」
「だ、だって……」
陽菜子は、顔だけをおずおずと布団から出した。
「いっぱい泣いたから、ただでさえブサイクな顔が、世界トップレベルにブサイクになってるんだもん。
サッカーで言うとヒデ並みだよ?」
陽菜子は泣きはらしたせいで顔が真っ赤になっていて、顔中にできた大人ニキビが、その赤さのせいで、いつもより目立って見える。
「古いんだよ、例えが。今はやっぱ久保だろ、久保!」
「どっちでもいいよ~。サッカーそんなに興味ないもん」
「何で例えたんだよ、サッカーに。
で?そのニキビ面が原因で落ち込んでんの?」
「そうだよ!涼ちゃんには分かんないでしょ。
泣きながら帰ってきて、鏡見たら、ニキビの化け物がいた、私の気持ちなんて!」
落ち込んでいるんだか、いないんだか。
いや、落ち込んでるんだろうけど、それでもどこか明るさを感じさせる陽菜子は、一緒にいて本当に飽きない。
「分かんねーよ。だってオレ、肌キレイだもん」
「はああああああ!今!全世界のお肌に悩む女子を敵に回したよ、この男!!」
「うるせーよ」
涼は笑いながら、陽菜子のほっぺたを軽くつねった。
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