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午後イチ、犬飼くんは資料を仕上げて提出してきた。私はそれを頭からチェックし正面に立つ彼に言う。
「うん。よく出来てるわ。いい? やれば出来るんだから、ちゃんと期限を守ること」
「はいっ。すみませんでした」
彼は朝と同じようにふわふわの髪を揺らして頭を下げる。
「じゃあ、これから外回り行ってきます。十四時からT社の坂田さんと約束してますので」
「うん。頑張ってきなさい」
「はいっ!」
犬飼くんは白い歯を光らせて、自席に戻っていった。
(素直な子だわ)
ディスプレイの隙間からふわふわ頭が椅子に座るのを見届けて、私は手元の資料に視線を戻した。この短時間でやったとは思えないほどキレイに纏められている。彼は若いだけあって理解が早く頭が良いのだ。
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