帰れない夜、戻れた星

2/17
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
この子もお腹が空いてるのかな。 「おいで。おいしいものをあげるよ」 ポケットを探るとチーズが入っていたので、舌打ちをして呼んでみる。 来ないかな。山の中の猫なんて、町中の猫より警戒心が強そう。だけど、山猫には見えない。もしかしたら、思ったよりもここは人里が近いのかもしれない。 しばらく観察していると、向こうも僕を睨むように見ていた。 しばらく見合って両者一歩も引かぬ状態になってしまったので、僕は仕方なく歩き出した。そうするとゆっくりだけど、着いてくるのがわかった。 僕は立ち止まって、差し出すけど、人の手からは欲しがらないようだ。 チーズを細かく裂いて、道の途中に置いた。 「ゆっくり食べなね。僕は先を行くから、安心して」 振り返らないで、先を歩いた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!